遙かなるもの・横浜(花壇)は、海づり施設からシンボルタワーにいたる海沿いの遊歩道の途中にあります。同型の花壇が二基並んでいる姿は、タワーに向って打ち寄せる波を連想させます。
作者の田辺光彰氏は、タワーの中央にも 遙かなるもの・横浜(貝)を制作しており、(花壇)と(貝)は共通のタイトルが示す通り、等しい構想の基に生まれ、共にタワーの象徴的な意味合いを具現化しています。 (貝)で最新のステンレス鋳造技術を駆使した作者は、(花壇)では反対に素材に白御影石を使い、一本の金鎚で整形する「谷積み」という伝統的手法を用いました。そのため(花壇)越しに海を眺めると、切り出した石が鋸の歯のように組み合わされているため、(花壇)が海のさざ波と呼び合うような趣のある景観をかもし出します。 こうした造形作品をシンボルタワーの600メートル手前に配置することによって、タワーを訪れる者にとり、(花壇)とタワーの距離感が、期待感となって現れてきます。 この造形作品は通常の花壇として使用出来るよう作られ、作者の意図により植物が植えられています。 作者は海浜植物の美しさを伝えたく、本牧周辺の海流に着目し、フィリピン沖から暖流に乗りこの地で生育していたハマユウと、アリューシャン沖から寒流に乗りこの地に運ばれてきたハマナスなどを植えました。これらはかつて本牧に自生又は自生していたと思われる植物です。 また(花壇)は植物の生育を考慮し、潮風を防ぐ形態に作られており、積み石内部からも輻射熱が出るようになっています。 作者により植えられた植物は、増殖して周辺の海岸に移植され植物群落を形成し、シンボルタワーを訪問する者にやすらぎと馥郁たる香りを与えています。
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▲ハマナス | ▲ハマユウ |
横浜に住んでいながら私達は海浜植物の美しさを知りません。この花壇には、遠い熱帯の国から黒潮(暖流)にのって流れついたハマユウと寒帯の国から親潮(寒流)にのって流れついたハマナスを中心とした植物群が植えられています。いずれも横浜の海浜に自生していた、あるいは自生していたかと推定される植物です。 (横浜は世界的な2つの大きな海流の交叉がみられるところです。) M.TANABE | |